ずっと読まなきゃと思いつつ、積ん読になっていた、ジェフリー•ムーアのキャズム、一挙に読みました。
ベンチャー企業に限らず、消費者の行動様式をまるで変えてしまうような不連続なイノベーションといわれる新製品や新サービスを世に出していこうとする企業が、それをどうやってマーケティングし、売っていくかという方法論が書かれた一冊。
いわゆるイノベーティブな製品というのは、創る側からすれば「間違いなく売れる」という自分の技術に酔うような状態になってしまいますが、実は大きな市場に展開する段になるとキャズム(深い溝)に陥り、まったく先に進めない状況になってしまう。本書はこのキャズムに陥らないためにはどうすればよいかという点を中心に論じています。仮にもSIer会社の一員としては、非常に勉強になる一冊でした。
製品・サービスそのものの名前がついたマーケットではなく、その製品・サービスを使っている顧客をイメージできるかどうか?という点は、デザイン会社のIDEOの発想法にも似ているような気がしました。(あの本も読まなきゃな)また、キャズムの向こう岸にいる実利主義者が買いやすいような製品・サービス戦略の意味や自社だけでなく競合相手からも浮き出てくるような市場でのポジショニング(ポジションステートメントは今後もいろんなところで使いたいです)が大事だということも分かって、満足な一冊です。新作のライフサイクルイノベーションも楽しみです。
残念なことに、帯に書いてあるようなドリームキャストやPC98がなぜキャズムに陥ったかについては書かれてません。(よく考えたら当たり前か、アメリカの人だもんね。)帯の裏についてはもほとんど書かれてないです。ここに書いてある製品•サービス群のキャズム?評価という本があれば、読んでみたいですね。
以下に印象的だった箇所を少し
- ニッチ市場とは、顧客がお互いに情報交換可能な一番小さな市場単位を示す
- テクノロジーライフサイクルには、5つに分けられ、それぞれに対して売り方(マーケット開拓方法、マーケティング戦略)があり、溝を越えるためには新しい戦略が必要となる(前にうまくいった戦略は使いものにならない)
- 市場に出す直前また出した直後は欲張るな。ニッチ市場でのマーケットリーダとなれ。「小さな池で大きな魚となれ」 page110
- ただし、二番目以降のニッチ市場も考慮にいれておかなければメインストリーム市場での成功はできない page167
- キャズムを越えようとするときには、顧客の数でターゲット・マーケットを決めるのではなく、顧客が感じている痛みの大きさで決める。 page123
- 新テクノロジーを支持するのはエンド・ユーザーであり、彼らには、アプリケーションの違いが分かるからである page138
- ターゲットマーケットではなく、ターゲットカスタマー page151
- ベンダーが顧客に説明する製品の機能、つまり価値命題と、製品が実際に発揮する機能とのあいだには差がある ---というものだ。その差を埋めるために、本来の製品に各種のサービスや補助的な製品を付け加えて、ホールプロダクトを作り出すのである。 page180
- 実利主義者が必要としているのはホールプロダクトである。 page184
- キャズムを越えるために必要なホールプロダクト=顧客の「購入の必然性」に応えるホールプロダクト page186
- page187の図は必見
- ターゲット・カスタマーが異なれば求められるホールプロダクトも異なる 価値命題を変えれば、顧客が求める機能を実現する製品やサービスの集合体も変わってくる
- キャズムを越えるためにベンダーが必死で自社製品を売り込んでいるとき、顧客が知りたいと思っているのは、実は競合製品についてである。 page222
- 初期市場における競争相手は、ベンダーのライバル会社ではなく、顧客企業の内部に潜んでいることがわかっている。 page223
- 実利主義者のとっての「競争」とは、ひとつの製品カテゴリーの中で複数の製品とベンダーを比較検討することなのだ。 page223
- page226,256の図、必見
- page250 ポジションステートメント 必見
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